自公政権は「エネルギー基本計画」で、原子力発電による電力供給を2030年度には全体の20~22%をまかなうことを目標に掲げています。火力や水力、自然エネルギーなどさまざまな発電方法がある中で、原発を主要電源に位置づける必要はあるのでしょうか。
*福島原発事故の教訓
最近になってやっと、福島第一原発2号機で燃料デブリの取り出し作業が始まったかと思ったとたんに作業中断。福島原発の報道からわかるのは、廃炉になった原子力発電所の跡片づけさえままならない現状です。ひとたび原子力発電所に事故が起これば、人が住めなくなるだけでなく、汚染水の放出など、その被害は日本だけにとどまらず、近隣諸国にとっても心配の種になります。
「安心安全な電力供給手段とは言えない」ことは、誰の目にも明らかになったのではないでしょうか。
*世界の流れに逆行?!
世界原子力機関(IAEA)が2050年までの原子力発電予測を発表しています。世界を10の地域に分けて説明している資料では、2030年の原子力発電予測を2023年の規模と比べて大幅に増やしているのは、日本を含む「中央・東アジア」の地域のみとなっています。逆にアメリカやイギリスなどを含む5つの地域、つまり世界の半分では発電規模をより高く見積もった「高予測」でも2023年の発電規模と同水準か、減少させる方向となっています。私が驚いたのは、オーストラリアやニュージーランドのある太平洋地域は、原子力による発電は今も2050年の予測も「ゼロ」だということです。
このことから、日本の計画(2021年度で全体の発電量の6%ほどしかないものを10年足らずで4倍近くに増やす方向であること)は、中央・東アジア地域の発電規模の増大に貢献し世界の流れとは真逆の方向を向いていると言わざるを得ません。
*原発を主要電源にすることで起こっている問題
西日本の関西電力・中国電力・四国電力の3エリアでの電力需要は2022年で230,861,272Mwh、2023年度で222,283,113Mkwhと大きな差はありません。しかし供給については下記のようになっています。
2022年度 2023年度(Mwh)
原子力発電
32,657,290
47,082,179 +14,424,889
火力発電
147,535,659 131,493,528 -16,042,131
水力発電
16,800,200
17,773,843 + 973,643
バイオマス
3,306,936 3,826,288 + 519,352
風力・太陽光
21,086,995 21,646,956 + 559,961
風力・太陽光(抑制量)
31,033 380,247 (発電しているのに使用されず処分)
停止していた原発の再稼働で原子力発電量が増え、その分火力発電が制御され、風力・太陽光などの再生可能エネルギーが抑制されている現状が数字に表れています。今のエネルギー政策がよくわかる数字で、主要エネルギーの1番が原子力、2番は水力(ダムは必要という観点から)の発電量を利用した上で、他のエネルギーが制限される仕組みが作られているのです。
*豊富な自然エネルギーの活用で電力をまかなうだけでなく雇用も増やせる
WWF(自然保護基金)ジャパンや自然エネルギー財団など多くの団体が2030年度原発ゼロを目標に掲げています。原子力発電に頼らなくても、豊富にある自然エネルギーの積極活用こそ未来ある方向だというのが世論です。また、そこで働く人も増やせる一石二鳥の取組みです。